あの人と体を重ねた日
私は性行為というのは未経験だ。いわゆる処女。
別にそれが良いとも思わないし悪いとも思わない。
昼ごはんを食べた後心地の良いものに襲われた。
誘われるまま私はベッドに寝転んだ。
暇を持て余している私は、自分でも気がつかないうちに“あの人”のことを考えていた。
意識がこの世界から離れるか離れないかの、あの気持ちが良いまどろみに身を任せた。
いつのまにか彼が目の前にいて私を覗き込んでいる。
私は何て声をかけて良いか分からずに、彼にされるがままに頬を撫でられた。
彼はそのまま優しく、情熱的に私を求めた。
こんなに幸せなことはなかった。
経験はないはずなのにリアルに私の中に彼が入ってくる感覚が、熱い体温までもが伝わる。
彼が切なそうに私を見つめる。
私が微笑むと、彼も満足そうに微笑み丁寧に私の髪を撫でた。
スマホの着信の音で現実に引き戻された。
一瞬何がなんだか分からなかった。
“あの人”はもういなくなっていた。